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その4.生まれは吉塚商店街

吉塚商店街で産声をあげました

水たきが博多の食文化となり、今や博多ではさまざまな個性ある水たきが味わえます。独自の飼料と飼育方法で鶏本来の旨味を追求した「博多 華味鳥」の水たきは、戦後間もない頃、博多東部の吉塚という町で生まれました。「とり善」という鶏肉の卸店でのことです。

この店は、昭和のノスタルジーを色濃く感じさせる吉塚商店街に「とり善小売部」として2017年まで営業しておりました。人気は創業当時から続く、初代社長・河津善陽氏考案 の「オイル焼」。シベリア・中国に出征していた善陽氏が現地で味わった料理をヒントに考えたものだそうです。オイル焼に使う煮汁は、創業当時からある釜で 毎日煮出しており、傷まないように休日でも火を入れ、その味は60年以上もの間、受け継がれていました。

さて、卸を担当し、老舗の水たき店「長野」にも鶏肉を配達に行っていた善陽氏は、その繁盛ぶりに自ら水たき店を始めることを思い立ち、吉塚の店舗の二階に店を開きました。切り盛りしたのは夫人の澄子さんで、ポン酢も彼女が考案。郊外の炭坑労働者を中心に、店は繁盛を極めたそうです。

写真は吉塚商店街「とり善小売部」を守ってきた梶原佐和子さん、安武おちくさん、八尋敏子さん。車椅子の女性が先代の夫人・河津澄子さん。