企業情報

会長 河津善博の想い

「鶏と人を育てる」──トリゼンフーズ河津善博会長が語る、二代目社長の覚悟と三代目への願い

――河津会長、社長として家業を継がれた当時を振り返って、どんな思いでスタートされたのでしょうか。

河津:「私は1972年に父の経営する有限会社とり善に入り、20年以上現場を見てきました。そして1999年に社長に就任しましたが、その時に強く意識したのは“単なる継承者ではなく、変革者であるべきだ”ということでした。当時の鶏肉業界は価格競争が激しく、付加価値のない卸売り中心のビジネスモデルでは将来が見えませんでした。だからこそ、自社ブランドの“華味鳥”を立ち上げ、飲食業にも参入するという大胆な決断をしたのです。」

――“華味鳥”は今や全国に展開する人気ブランドですが、そこまでには困難もあったのでは?

河津:「もちろん、最初からうまくいったわけではありません。自分たちで鶏を育て、自社加工場でさばき、最終的には自分たちでお客様に提供するという、いわば“鶏の6次産業化”です。飲食店を開いてすぐに撤退したこともありますし、周囲から『本業を見失うな』と言われたこともありました。でも、お客様が“美味しい”と言ってくださる。それが原動力でした。何より、社員たちが一緒に夢を追い、失敗から学び、成長してくれたことが財産です。」

――2015年に会長職に就かれ、三代目である息子さんに社長を譲られました。その際、どんな言葉をかけられましたか?

河津:「“継ぐのではなく、創れ”と伝えました。企業の存続は“過去を守ること”ではなく“未来を生むこと”だと私は思っています。私の時代は『垂直統合モデル』という骨格を作ることに力を注ぎましたが、これからの時代はデジタルや環境、国際化といった“外とのつながり”が重要になります。SDGs対応として鶏糞を有機肥料や海洋資材に再利用する『トリゼンクオリティーオーシャンズ』も、その一環です。三代目には、既成概念にとらわれず、社員と社会の信頼を得ながら、新たな価値を創造してほしいと思っています。」

――経営において、大切にしている座右の銘は何でしょうか。

河津:「“人間万事塞翁が馬”です。これは創業者でもある親父が大事にしていた言葉でもあります。思い通りにいかないこともあるけれど、それが次のチャンスになる。私も何度も失敗しました。でも、振り返ってみれば全てが“糧”だったと感じます。だからこそ、若い経営者や社員には、失敗を恐れずチャレンジしてほしい。鶏を育てるのと同じで、人も企業も、時間と手間、そして愛情が必要なんです。」

――ありがとうございました。