知る・楽しむ

櫛田神社の直会

八角形の不思議なテーブルにセッティングされた水炊き

2013年10月24日(木)。雨天のため、残念ながら秋の大祭「博多おくんち」は中止となりましたが、 17:00~の直会は開催されました。特別な許可を頂き、潜入レポート。噂の櫛田の水炊きの真相はいかに。

阿部宮司の挨拶から会はスタート。終始和やかな直会は、八角形の不思議なテーブルにセッティングされた水炊きと、日本酒のシンプルな会。炭火七輪で炊かれる水炊きにも風情があります。
まず、櫛田の直会のルールは以下。

1.つがれた水炊きは残さず食べる!
2.つがれたお酒は飲み干す!
3.後は好きなもんを好きなだけ食べる、飲む。
4.基本的には一番下っ端が鍋奉行。しかし、そのテーブルに鍋奉行を希望する者がいる場合は例外。
5.テーブルは、各流(山笠の流)毎に。櫛田神社の雅楽部など流とは別のテーブルもある。

水炊きの具材は、鶏ぶつ切、肝、つくね(つくねは、お好みで)、ねぎ、しいたけ、白菜

◆櫛田神社宮司 阿部憲之介様(真ん中)

ここでは、会社でどげな仕事してるとか、偉かろうが偉くなかろうが関係ないと。若こうても一生懸命やっとう人たちば応援してやりたい。

博多の名が全国で知られるようになったのは、やはりここ博多に根ざして町を守ってきた人々がいるからこそ。 

◆博多祇園山笠振興会会長 瀧田喜代三様(左手前)

あんたんとこと、比べて水炊きの味ば、どげんね??(笑)こげんして、大勢で食べると美味しかろ。

水炊きへの思い?「あぁ、また“水炊き”か、“かしわ”かぁ」という感じ、ははは!
しかしね、ここには色んな人が来とんしゃ、初めて食べる人、久々に食べる人、そうした人の話ば聞いて帰りなさい。それぞれに思いがあるもんよ。

◆櫛田神社 雅楽部の皆さん
元々ジャズトランペッターの黒岩さん。引退して今は雅楽部で竜笛(りゅうてき・横笛)を吹いていらっしゃいます。

このテーブルは他とちょっと違って雅楽部のテーブルやけん、山笠の話はあんまりせんね。次の舞台のときにはこうしよう、とかの打ち合わせ。
次回は、新年の1月3日の元始祭に向けて練習中。
櫛田の水炊き?ここだけの話やけどね、ごりょんさんが厳しかぁ~!!笑 

◆ごりょんさん 橘さん(真ん中)

ここで水炊きを作りだして27年。いついつ直会があるよ、と決まるやろ?そしたらそれに向けて「ぽん酢」の支度をするんよ。「ぽん酢」は1カ月前から作って寝かせる。ずっと昔から作り方は同じ。
“かしわ”は、そこの樋口さんとこで買いよる。あそこが一番いいけんね。
柔らかかった?食べ始めるな、という20分前から炊くんよ、始めに宮司さんの御挨拶があるやろ、今日は長いかな、短いかな、と予想してね。

歴史ある櫛田神社の会館という独特の雰囲気の中、始まった櫛田の直会。会がスタートすれば一転、上座の方が下座の輪に入り、語らう姿が見受けられたり、あちこちで笑い声が響き、そこはまるで親戚の集まりのような和やかさでした。

当日、初めてこの直会に参加したという若手の男衆は、「ここで水炊きを食べれれば、博多じゃ一人前。美味しいです。」とその味を噛みしめていらした様子。

そして何より、円滑な会の進行のため、テキパキと段取りよく仕事をこなす“ごりょんさん”の姿が印象的。ときには、鍋の食べ方に目を光らせたり!、ときには参加者たちとテーブルについて乾杯したり。その目配り気配りをする姿に、博多女子の底力を感じました。

櫛田の水炊きは「人と人を繋ぐ」重要な役目を果たしている、と事前にお聞きし、実際の現場にお邪魔させていただきました。そこで出会ったのは、八角テーブルの程良い距離感で水炊きを囲む、博多をこよなく愛する人たち。

人間関係が希薄になりつつあると云われる昨今、ケータイでもSNSでもなく「水炊き」を媒体に、時には心強く、時には多少の煩わしさも感じつつ、人と人が向かい合う、そんな様子は、昔から変わらぬ人と人のコミュニケーションがそこにはありました。